“tough ain't enough.”(タフだけでは充分じゃない)。
これはクリントイーストウッド監督主演作品「ミリオンダラーベイビー」でボクシングジムに貼り付けてあった訓示です。要はタフなボクサーは数多いるが、それだけでは強いボクサーにはなれないという意味です。
サッカー界でタフな国に分類されるのが、王国ブラジル。ブラジルと言えば、小さい頃から裸足でストリートサッカーに明け暮れ、プロになっても十数時間のバス移動は当たり前というほどタフな環境でハングリー精神にあふれています。ブラジル人選手がいないリーグを探すほうが難しいくらいどこの国でも優れた順応力を発揮するタフさも持ち合わせています。さらに“マリーシア”(ずる賢さ)という言葉がサッカー界で幅を利かせるなど、勝負に対するこだわりも並々ならぬものがあります。
クラブワールドカップ決勝でバルセロナを下した南米代表インテルナシオナルも、もちろんタフでハングリーでした。ファビアーノエレル、インジオ、ルイスカルドゾ、セアラーのDFラインは強固で、まったく臆することなく間合いを詰め、たとえかわされても必死に食らいついていました。そんなタフさはチーム全体に浸透していて、FWイアルレイを旗頭に連動してボールを追い回していました。
前評判の高かったバルサを上まわったのは、このタフさだけではありません。「我々はバルサを攻略するためにチェルシー戦、ブレーメン戦、レアル・マドリード戦を徹底的に分析した」とブラガ監督が試合後語ったように、戦術面でもヨーロッパ最強を圧倒していました。
バルサの最大にして最強の攻撃パターンはロナウジーニョを経由した攻撃。彼が左サイドでDFを引き付け、スペースのあいた逆サイドへサイドチェンジし、そこにジュリやグジョンセンが絡んでいく。インテルはそれを攻略するために、まずマークの役割を明確にし、特にキープレイヤーとなるロナウジーニョにはセアラーをつけます。さらにボールサイドにDFを集中させ、そこでのスペースを消し、サイドチェンジのボールを出させないという守備的戦術をとりました。
地元ブラジルのメディアには「暴力的だ」と批判されたらしいのですが、「私は信念を貫く」と敢えて批判を受け、バルサ戦に挑みました。
さらにメンタル面でもバルサの優位に立っていました。インテルはバルサよりも4日も早く来日して調整を行い、今大会を各国代表が闘うワールドカップと同じ位置づけで臨んできました。そのモチベーションが決勝での完封勝利へと繋がったのでしょう。
確かにバルサの技術は今大会出場したチームでナンバー1でした。ただ・・・
“technique ain't enough.”(技術だけでは充分じゃない)
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