記録的な猛暑により関東地方の需要電力が供給可能電力を上回る可能性が高く、塩原水力発電を午後1時から臨時稼働させた8月22日。国立競技場で北京五輪を駆けたアジア最終予選がスタートした。
第1戦の相手はアジアカップで決勝トーナメント進出を果たす快挙を成し遂げたベトナム。A代表に11人のU−22代表が名を連ねたベトナムと、日本A代表がアジアカップで対戦したこともあり、分析と対策は容易だったはずだ。
戦いは大方の予想通り、日本が一方的に攻めた。しかし終わってみれば結局1対0の薄氷勝利。拙攻、パスミス、連携ミス、決定力不足など、多すぎる課題が見え、不安が増大するばかりだった。
前回のアテネ五輪予選では、ダブルセントラル方式が採用され、UAEと日本での2つのラウンドの短期決戦で行われた。UAEラウンドでメンバーの大半が体調を崩すハプニングがあったが、日本ラウンドでケガから復帰した大久保、阿部の活躍もあり、五輪行きの切符を手にした。
今回の最終予選の利点は、完全ホーム&アウェイ方式のため、ケガ人(伊野波、西川ら)の復帰を期待できる利点がある。日本にはタレントが豊富なので、その都度最高のメンバーで臨むことができる。
また課題を修正し、相手を分析・対策を練る時間をとることもできる。スカウティング能力に優れた日本にとっては有利に働くのは間違いない。
しかし不安が拭い切れないのはどうしてだろうか。それはベトナム戦で露呈した課題もさることながら、課題を克服できるだけの伸びしろが感じられないからだ。特に攻撃陣は頼りない。
平山はF東京で出場機会が激減し、試合勘が明らかに鈍っている。回りの状況を把握した最適な選択ができず、トラップミス、パスミスも多すぎる。最終予選のギリギリの戦いにも関わらず、ゴール前のビッグチャンスでボールを抱えるようなハンドを犯し、観客の失笑を買うなど前代未聞の天然ぶりを発揮した。安定感のないポストプレーといい、決定力のなさといい、ストライカー失格の烙印を押されても仕方ない出来だった。
さらに左サイドの本田圭に攻撃の迫力がなく、トップ下のポジションもファーストチョイスがいない。システムも盤石のものはなく、3バックや4バックを併用。よく言えば臨機応変、悪く言えば行き当たりばったりの守備となっている。
今後期待できる戦力として、カレン・ロバート、森島康仁、梅崎司、菅沼実、森本貴幸が挙げられるが、いずれも突き抜けた力はない。
正直言って、東京電力が塩原水力発電を臨時稼働したような措置が、今のU−22世代ではできない。つまり戦力を臨時増強してパワーアップさせる余剰分がほとんどないのだ。日本の持つ最大限のポテンシャルを今後発揮したとしても、それを相手が上回る可能性がある時、日本はその力の差を補う措置がとれないだろう。
ここで断言できるのは、ベトナム戦から日本が進歩しなければ、アジアで確実に敗れ去ることになる。
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