今回は少しサッカーの話とは違います。
先日、韓国人留学生が線路に転落した女性を救出したニュースが話題になりました。
2001年にも同様の事故が同じ場所で起き、その時は救助にあたった韓国人留学生と男性カメラマンが亡くなっています。自分の命をかえりみず、人命救助にあたる勇気に感動しますし、自分がもしその現場にいたならば行動を起こすことができただろうかと、考えさせられたりもします。
先月、そんな現場に私は偶然にも出くわしました。
終電間際の目黒駅。人はまばらで列を作って並んでいる人がいない閑散としたプラットホーム。
私は線路から3mほど離れて本を読んでいたのですが、私の斜め前で何かが瞬時に消えたのを感じとりました。
と同時に小さな悲鳴。「まさか」と思い線路に近づいて行くと、2人の男性が勢い良く線路に飛び降りました。そこには40代くらいの男性が倒れていたのです。救助にあたった2人の男性は「大丈夫か!」と叫びましたが、泥酔している男性はまったく動きません。
ここからの連係が見事でした。まず通りがかった男性が緊急停止ボタンを押します。
さらに線路に下りた2人の男性が90kgはあろうかという巨漢の男性を担ぎ上げます。ただ体重が重すぎてホームまで押し上げられません。そこで、ホーム上にいた私含め3人の男たちが頭、腹、足をそれぞれ抱きかかえ引っ張り上げました。すべての任務は滞りなく完了。30秒前と違うのは、ホームに一人の泥酔者が寝転がっていることだけでした。
救助にあたった6人の男達は誰一人として顔見知りではありません。それが証拠に、駅員が全速力で駆けつけた時には事情を説明するために残った一人だけ。あとはそれぞれ違う方向へと歩いていきました。
今回の人命救助に言葉はありませんでした。助けるために最適の行動が行われただけでした。救助できたことを喜び合うこともなく、人としてやるべき任務を遂行しただけでした。
少々大げさかもしれませんが、素性もわからぬ男達が貧しい村を救うべく寄り集まった黒澤映画「七人の侍」の感覚にちょっとだけ似ている気がしました。その中の一人になれた気持ちなって、気分良く家路についたことを今でも記憶しています。
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